ジャッジメント・フリーとは?
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- 2022年6月15日
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ライフコーチとの一対一のコーチング会話が行われるのは、「ジャッジメント・フリー」な空間です。あなたが話すことについて、コーチが持っている価値基準で判断をされることがない空間だということです。改めて書いてみるとどこか大袈裟な感じもしますが、ジャッジメント・フリーとはどういうことか、記してみたいと思います。
コーチトレーニングを受けたことで気づいたのですが、家族や友人といった親しい人たちとの日々の何気ない会話、同僚や上司との仕事の場での会話、この中で本当にジャッジメント・フリーな会話って実はすごく稀なんだなあ、ということです。
というか、日々の会話を通じて自分がジャッジされている、そういう立場に置かれている、などとは普段特に考えてみないですよね。そうだとすると、会話しながら相手の価値判断の対象に自分がなっていることそのものが自分に与えている影響などについては気づいてもいないことが多い、というかもしれないですね。
例えば、職場でのちょっとした気になる出来事を家族や友人に話した時。
「なんだ、それ!」
「え〜、そんなこと言っちゃったの?」
「ああ言い返せば良かったのに。」
「そう言われるのは、あなたの立場からしたら当然だよね。」
こういった、一見たわいもない返答にも、もしかしたら赤字にあるようなジャッジメント要素があって、あなたのその時の気分や気持ちの状態によっては、そのジャッジメントが心に大きな影響を与えるかもしれません。
「なんだ、それ!(そんなことが起こるあなたの職場っておかしいんじゃない?)」
「え〜、そんなこと言っちゃったの?(言わない方が良かったんじゃないの?)」
「こう言い返せば良かったのに。(なぜ言い返さなかったの?弱気になっちゃだめだよ)」
「そう言われるのは、あなたの立場からしたら当然だよね。(職場でそんな立場にいるあなたがいけないよ、嫌だったら転職しなよ)」
こんなジャッジメントが返答の裏に隠れているとしたら、受け取ったあなたの方は、そうとは気づかずとも、きっとがっかりしたり、ちょっと傷ついたり、もしかしたら「言わなきゃよかった」とすら思うかもしれません。
翻って、コーチング会話の大きな力の一つは、まず、自分の話を、遮られることなく、最初から最後まで聞いてくれる人がいて、話すことによってスッキリ感、満足感を得られる、ということ。
なんだ、たったそれだけのこと?と思われるでしょうか。そうなんです。それだけのこと。でも、45分から一時間というまとまった時間に、心にあることを思う存分好きなだけ言葉にする、そういう時間は私たちの忙しい現代生活において、大変稀なのではないでしょうか。
そして、会話の相手は傾聴を重要なスキルとするライフコーチです。コーチが個人として持っているかもしれない価値判断基準は外に置き、その一端を会話の返答や相槌から漂わせることがないのです。こういう環境では、話す方は安心、落ち着いて思いを言葉にすることに集中できるものです。
普段、私たちの心にあること、意識の上の方にあることだけではなく、潜在意識にあるかもしれない思い。これは言葉に出してみて初めて私たちが認識できるものとなるようです。コーチからの質問に答えようとするその過程を通し、潜在している思いを引き出し、言語化によって初めて、あるいは改めて、あなたの意識にのぼってくるという感じです。
時々、思いを話されている途中のクライアントさんから発せられる言葉があります。
「あれ、話してるうちに忘れてしまいました・・・質問は何でしたっけ?」
こう言われるクライアントさんの方は忘れてしまって申し訳ない、という感じでおっしゃってくださるのですが、私の方は、コーチングをしながら、いい感じで進んでいるなあと内心嬉しく感じます。
私の発した質問をもとに、それに答えようとご自身の心の中を覗かれ、それを言葉にされているうちに、どんどん色々なことが出てきて、それらは全て繋がっているのだけれど、そのうち、一番最初の質問が何だったのかはふと意識から外れていった、という感じです。
私の方からは、
「質問はこういうものでした。この質問に答えようとするうちに、これこれこういうお話が出てきましたよね。出てきた色々なことは、どういうふうに繋がっていますか?」
というような更なる質問をしてコーチング会話が進んでいきます。
言葉にすることについて、会話の相手から一つ一つ、ジャッジメント(価値判断)のボールが飛んできたら、まっさらな気持ちで自分の内面を見つめてみることはできません。そのボールをうまくかわしたり、受け取ってどう投げ返そう?とそこに意識が行ってしまって当たり前です。
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「職場で、こんなことがあったんです。私はこんなことを上司に向って言い、その時はスッとしたんですが、あれからずっと、なんか心に引っかかっているんです。」
あなたがこう言った時に、ライフコーチであれば下のような言葉をかけ、更なる質問でコーチング会話を進めていくでしょう。
「以前から気になられていたことを上司に話されたのですね。きっと相当の勇気が必要だったこととお察しします。一歩を踏み出すことができ、よかったですね。一方、おっしゃったことの何かが気になられているご様子。気になられているのは、どんなことですか?そのことを思ってみるとき、どんな気持ちがしますか?」
コーチング会話が「ジャッジメント・フリー」な場であると言われるゆえんについて、少しお伝えできたでしょうか。

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