ヒューマニタリアン・コーチングの実践ヒント
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- 8月30日
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「ヒューマニタリアン・コーチング」とは?
これから数回に渡り、「ヒューマニタリアン・コーチング」の実践ヒントについて書いていきたいと思います。私自身、ヒューマニタリアンのバックグランドのあるコーチとしてクライアントの方々とコーチング・パートナーシップを持ち、そこから学んできたことを、ヒントとしてご紹介します。
ここでいうヒューマニタリアン・コーチングとは、人道支援分野で働くクライアント(コーチ― coachee とも呼ばれます)とコーチとの間に築かれるコーチング・パートナーシップのことを指しています。人道支援は、狭義の「人道危機対応」にとどまらず、国際開発や社会的インパクトを目指す幅広い分野を含むものとして理解されることもあります。
そういったクライアントの方々とのコーチングセッションから得た学びとヒントは、人道支援分野に限らず、どのようなクライアントやコーチにとっても役立つものだと思います。
コーチングは「アドバイス」ではない
「コーチングとは、ある分野での実務家や経験者から助言や指導を受けること」という誤解がいまだにあるようです。もちろん、スポーツの分野などではその理解はまったく正しいです。また、私が働いているオランダの高等教育の場では、「コーチング」という言葉はしばしば、先生や先輩学生が「コーチ」や「メンター」として学生に助言や指導を与えることを意味します。しかも「コーチ」と「メンター」という言葉が同じような意味を持つ言葉として使われることが少なくありません。
しかし、私がここで扱うのは、私自身もプロコーチとしての認定を受けている国際コーチング連盟(ICF)が定義するコーチングです。ICFにおけるコーチングとは、コーチがクライアントに直接的なアドバイスをするのではなく、クライアントが自分自身の中にすでに持っているリソースを探り、引き出せるよう支援するプロセスです。
では、コーチのバックグラウンドはまったく関係ないのでしょうか?そういうわけでもありません。私がもし、「ヒューマニタリアン・コーチングをするコーチが実際に人道支援の経験を持っていることはよいことかどうか」と聞かれれば、「Yesでもあり、Noでもある」と答えると思います。というのは、メリットとデメリットの両方があるからです。そのような点について、これから数回のブログで掘り下げてみたいと思っています。
人道支援のバックグラウンドを持つコーチ
人道支援のバックグラウンドを持つコーチが、なぜ人道支援分野で働くクライアントにとって価値があるのでしょう。
これまで私は、いわゆるフィールド、あるいは「現場」で活動するクライアントを多くコーチングを通してサポートしてきました。彼らの多くは首都から遠く離れた場所に生活し、避難民や困難な状況に置かれた人々と日々向き合い、働いています。これは、直近のスーパーに行けば何でも揃う「普通の」生活とはまったく違った日常であり、現実です。
コーチングを始めるにあたり、私が人道支援の経験を持つコーチであったことを知って安心し、ほっとしたと話してくれたクライアントは大勢います。それは、人道支援の現場で置かれた環境や直面する課題を「理解している」相手に伴走してもらえる、という安心感だったようです。
一方で、私とコーチングをする前の、他のコーチとの経験が今ひとつピンとこなかった、何かが違った、と振り返る人もいました。そして、その経験を、「この(人道援助の)世界を知らないコーチだったから」と説明してくれるのです。たとえば「隔地での生活ってどんな感じなんですか?」といった質問をコーチからされたそうですが、その質問がクライアントのコーチングの課題に関係しているからというよりは、人道援助の現場、コンテクストに対するコーチの興味本位から出た質問という感じがしたのだそうです。
そういった説明に時間を取られてしまう上、時間をかけて質問に答えても、コーチの表情やエネルギーからはてなマーク(?)が消えることはないそうなのです。

実体験以上のもの
共感、深く能動的な傾聴、承認、そしてバリデーション。これらは改めて言うまでもなく、コーチングの根幹を成すスキルです。そして、それらが、クライアントが語る経験の本質を本当に理解しているコーチから発せられるとき、その重みは一層深いものになります。人道支援の現場を実際に生きてきた経験は、揺るぎのない力を与えるものです。
しかし、ここで忘れてはならない大切な点があります。
人道支援の豊かな経験があるからといって、それだけで優れたヒューマニタリアン・コーチになれるわけではありません。
人道支援の経験を本当の価値に変えるのは、熟達したコーチングのスキルです。人道支援の経験とバックグランドをコーチングスキルと結びつけるとき、クライアントは確実にその違いを感じ取ります。アドバイスをしなくても、人道支援の経験を持つコーチが注意深く、そして共感をもって耳を傾けること自体が、クライアントにとってはかけがえのない体験となるのです。これは私自身の実践を通して確信していることです。
落とし穴:回想にひたってしまう瞬間
一方で、人道支援の経験を持つコーチだからこそ注意すべき落とし穴もあります。たとえばクライアントが「現場に戻りたい」「緊急対応の真っ只中にいたい」「休んでいる今、取り残されているようで苦しい」といった思いを語るとき、私自身の中でその一瞬、記憶が鮮やかによみがえることがあるのです。「ああ、その感覚を私も覚えている…」あるいは「今あの場所にいたらどんな気持ちだろう?」と。
これが人道支援経験のあるコーチにとって危険な落とし穴になります。
コーチとして経験を積み、成長するにつれて、私はそうした記憶が呼び起こされる瞬間に、「こら、だめだよ!」と自分でその回想の流れを中断することができるようになりました。そしてそれに気づいたときには、すぐに自分を「今、ここ」へ引き戻し、目の前のクライアント、クライアントのストーリーに立ち返るよう努めることができるようになりました。
クライアントが語る物語の主役は、あくまでクライアント自身であるべきで、コーチ自身の記憶や回想が主役を押しのけてはいけないのです。

今後ブログで扱っていきたい実践ヒント
クライアント向け(コーチを探している人道支援ワーカーへ)
認定を受けたコーチを選ぶこと
トライアルセッションを試してみること
コーチの「聴き方」に注目すること
コーチ向け
人道支援ワーカーもまずは一人の人間であることを忘れない
本質的な問いを立てること
「わかります」「その気持ちよくわかります」といった言葉を避けること
自分の記憶や感情に引き戻されたら、すぐに気づき手放すこと
私はこれまで、ノルウェー難民評議会(NRC)、国際移住機関(IOM)、国連児童基金(UNICEF)など、多くの組織で働く人道支援ワーカーをコーチングしてきました。現在は、国境なき医師団(MSF)の外部コーチとして、またヒューマニタリアン・コーチング・ネットワークのプロボノコーチとしても活動しています。
加えて、こうした国際的に知られた組織だけでなく、地域に根ざした草の根の団体で働く人々とも関わってきました。大きな機関で働く人々と同じ精神を持ち、同じような課題に直面している彼らからも、多くを学んでいます。
ここで紹介していく実践ヒントは、そうした多様で豊かな人道支援ワーカーとの出会いと経験から生まれたものです。
もし現在コーチを探している方、あるいはコーチング経験はないけれども関心があり「今の自分にとってどのような価値を持つのだろう?」と考えている方がいらしたら、ぜひ無料体験セッションにお申込みください。あなたの歩みにコーチングがどう寄り添えるのか、ご一緒に探していければと思います。
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