コーチングスキルとしての傾聴力
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- 2022年5月7日
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更新日:5月25日
これまで私のコーチングを受けてくださった方には以前から知っている友人・知人も多いのですが、知っている人からコーチングを受ける、知っている人にコーチングをする、とはどういうことでしょうか。
ここでいうコーチとは「ライフコーチ」のことで、スポーツコーチ、ヘルスコーチをはじめとする、特定の知識を直接に伝授したり技術を指導するコーチとは違うものです。
一方でライフコーチをするにあたって必要な知識や技術というのは確かにあって、それをコーチトレーニングで学ぶわけですが、その知識や技術そのものをコーチングセッションを通してクライアントさんに伝授するわけではありません。むしろそれを道具としてコーチング会話をするのであって、その知識・技術がないと本当のコーチングはできません。
コーチング技術のうち、私がとても大事だなあと最近特に感じるものの一つが「アクティブ・リスニング」つまり傾聴力です。なんだ、それだけのこと?だったら家族でも友達でもできる、と思われるでしょうか。自分の思いを存分に言葉にし、それを途中でさえぎられたり「それは違うよ」と聞いている人の意見を言われたりすることなく、とにかく一心に聞いてもらう。忙しい私たちの生活の中でそのような経験は実はあまりないのではないでしょうか。
「いつも家族のことで忙しく、これだけ自分のことだけについて考えて、話をしたことって本当になかったです。すごくすっきりしました。」と、初めてコーチングを受けたクライアントさんのお一人が最近しみじみとおっしゃっていました。私も、コーチングの傾聴力というスキルの大切さについて改めて実感した瞬間でした。
コーチとクライアントさんがコーチング会話の中で話をする時間の割合は2対8くらいが目安だというコーチトレーニングを私は受けました。トレーニング中にそれを聞いた時は「え、じゃあコーチってほとんど聞いてるだけ?」と驚きましたが、今はしっくりときます。クライアントさんの言葉をじっくり聞き、それに対して感想や自分の考えなどで返さない。なぜかというと、感想や考えを述べるというのはつまり、クライアントさんが話されたことに対してコーチが間接的にせよ、ジャッジしているということだからです。コーチング会話中、ほんの二割であるコーチが「話す」時間の中で、いかに「エンパワリングな(力を与えるような、エネルギーを鼓舞するような)」質問をクライアントさんに投げかけるか、それがもう一つ、また別のコーチングスキルです。
ここで一番最初に書いた、知っている人からコーチングを受ける、知っている人にコーチングをする、という話題に戻ってみます。コーチングがある一定の技術(スキル)を必要とするものであるのなら、そのスキルを最大限に活かしてセッションをしている以上、クライアントさんが友人・知人であろうと、全く知らなかった人であろうと、関係ないのでは・・・?
私自身が最近持つようになった感覚は、コーチングセッション中、オンラインプラットフォームを通して声が聞こえてくるクライアントさんを友人・知人に持つ、物理的存在としての「私」を通して、a higher coach (意識の高みにいるコーチ、とでも訳しましょうか)がコーチング会話をしている、というものです。そのhigher coach が傾聴力、エンパワリングな質問力等のスキルを駆使してコーチングをしている、という感覚です。
「a higher coach」というコンセプトはコーチトレーニングを受けていた時に学んだのですが、それは、私たちは誰しも(コーチでなくても)、自分自身の中に本能的な声というのを持っていて、その声を聞き、その声に従うことで、本当に自分自身の進みたい道、やりたいことへ向かっていける、というものでした。
コーチの役割は、自分のhigher coach を通して、クライアントさん自身のa higher coach にアクセスするお手伝いをする、そういうことなのかな、と思います。
「友人・知人としての帽子は脱いで、コーチの帽子に被り替えますからどうぞご安心を」とクライアントさんである相手にも自分にも言ってきましたが、最近そのことがしっくりと感じられるようになってきました。

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