ニュースレター 2026年5月
価値観に立ち返ってみる
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価値観とつながり、行動を整える
新緑が美しい5月がやってきました。
ちょうどひと月前、私はイギリスのバーミンガムで行われたファシリテーションのカンファレンスで、五感を使った森林浴の瞑想を通して、自分の価値観とのつながりを取り戻すというワークショップを開きました。
忙しい日々の中で忘れたり、二の次にしてしまっている価値観が、今、自分にどんなメッセージを伝えようとしているのか、そのメッセージを受けて、これからどんな一歩を踏み出したいのかを感じてみる時間をつくりました。
プロセスには、フォーカスド・カンバセーション・メソッド(オリッド - ORID)の流れを用いました。オブジェクティブ(Objective 客観的事実)・リフレクティブ(Reflective 内省的気づき)・インタープリティブ(Interpretive 解釈)・ディシジョナル(Decisional 意思決定)という四つのレベルを通して、意味づけを行い、次の行動への意思決定へとつなげるファシリテーションの手法です。
私は、このORIDの流れにこそ、どのような対話の場にも必要な要素が含まれていると考えており、講師として勤務先の大学で導入したファシリテーションクラスに取り入れたり、自分が主催するワークショップの流れに取り入れたりしてきました。
今回のワークショップは、個人の内省だけでなく、組織やチームにおける対話の質や意思決定のあり方にもつながる実践としてデザインしたものでした。
カンファレンスの最初のワークショップとしては、少し落ち着きすぎているかもしれない、という私自身の懸念にもかかわらず、参加者からは
「もっとこういう時間が必要だと感じた」
「ワークショップの後になっても振り返りの余韻が続いている」
といったうれしいフィードバックをいただき、このようなワークショップの価値と、ORIDの有効性を改めて感じました。
私のサービスでは、この流れを用いた「プロセス」のファシリテーションも提供できますし、ファシリテーションスキルそのものの学びの場も提供します。オリッドの流れは、例えば、組織でのリトリートや、活動を振り返る場としての会議などで有効です。

社会課題に向き合う人こそ、立ち止まる時間が必要
社会的インパクトを目指すセクターで活動する方々とご一緒すると、はっきりと言葉では聞かないまでも、「立ち止まっている暇などない」「そんな余裕があったら仕事をしたほうがよい」と思われているのだろうことを感じることがあります。
確かに、社会的インパクトをめざして忙しい日々を過ごす方々にとって、立ち止まり、振り返る時間はなかなかないと感じるものかもしれません。
でも、だからこそ、静かに立ち止まり、今のやり方を真摯に見つめ、振り返る――自分自身の価値観とつながりながら、今の生き方や働き方がその価値観に沿っているかを確かめる――そして必要に応じて修正し、やり方を変えたり、違う方向を選んだりする。そんな時間を持つことが、インパクトセクターにこそ必要だと思います。
個人のウェルビーイングという観点だけでなく、組織やチームの持続性という意味でも、「立ち止まる力」はとても重要です。振り返りの質は、そのまま意思決定の質につながります。あえて言うと、そうしたプロセスなしに、本当の成長は難しいのではないでしょうか。
振り返っていない組織・チームは、外から見ていても分かるものです。今の時点でどれだけ勢いがあっても、行き詰まりが待っていると見るのは余計なお世話でしょうか。
現在、コンサルタントとして、ある非営利組織での内部コミュニケーションを見直すためのサポートをしています。個人のレベルでも、チームとしても、確実に気づきが生まれ、変化が起きています。
けれども、その微妙な変化を支え、言語化し、次につなげていくには、時に私が担っているような外部の人間の中立な視点と伴走が有効だ――そのことを改めて感じています。というのは、内部の人にとって、今までも扱ってきた課題を改めて話していても、「今までも話してきた」「この課題は今分かったことではない」「またあの人がああ言っている」といった、今までと同じことにひっかかってしまいがちなのです。
そこで、外部のファシリテーターが、よく聞き、表面化してきたことを改めて言葉で表現し、何を扱う必要があるのかをレポートなどで可視化し、「これは大切なことだ」と確認していく。まさにそのプロセスこそ、多くの組織で十分に行われていないことなのです。

若い人たちとの対話から得るもの
写真は、前出のバーミンガムでのカンファレンスで、シンガポール出身のCさんと撮ったものです。彼女とは去年のカンファレンスで顔見知りになり、その後彼女が連絡をくれ、コーチ・メンターとして話をしてきました。この間、彼女はイギリスで仕事を得て、今年のカンファレンスでは、彼女自身もワークショップを開催しました。
こうした歩みを間近で見ることは、私にとっても大きな刺激であり、学びでもあります。
若い人、ということで思い出すことがあります。学生時代は、勉強すればその見返りが成績という形で比較的見えやすいものです。でも、仕事の世界では、努力や力量が正当に評価されるとは限りません。また、若いというだけで、能力や実力に関わらず、指導やサポートの対象として扱われたり、エンパワーメントの主体ではなく、その対象にされたり……そんなフラストレーションも、若い方々とのコーチングやメンタリングの中でよく耳にします。
私が教えていた大学でも、学業では優秀な学生が、インターンシップで働き始めた途端、仕事の進みの遅さ、「自分の方がうまくできると思うのに任せてもらえない」というフラストレーションで悶々としていたことがあります。メンターとして伝えたのは、批判はひとまず脇に置いて、「この人がいてくれると助かる!」という存在になること。実際にどんどん仕事を引き受け、行動で信頼を得ること。とにかく行動してサポートし、「この人がいると嬉しい!」と思われる存在になることでした。
世代間の対話、という言葉も最近よく聞きますが、本当に対話になっているのか、単に一方通行の押し付けになっていないか――これもまた、立ち止まって振り返ってみることが必要なのでは、と感じます。こうしたズレや期待の行き違いを丁寧に扱うこと自体が、本当の意味での対話であり、関係性を整えるために大切なプロセスだと思います。
やはり、そのような場でも、中立な立場から対話を支えるプロのファシリテーターの存在は大きいです。ピンと来なくても、一度、そのようなプロセスを体験してみていただければと思います。
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それぞれの色と輝き
ここ半年ほどで、金継ぎや書道を長年実践されている方の場づくりのお手伝いをさせていただくことがありました。もちろん、師範でなくても実践されている方はたくさんいます。
二回の春のオンラインワークショップを経て、去年の秋にオランダにいらした今井さん。到着して数日の頃、「これだけオランダでも金継ぎを教えている人がいるのなら、僕は彼らに任せます」とおっしゃったのです。つまり、オランダにまできてワークショップするのは今回を最初で最後にする、と。
そのとき咄嗟に私の口から出てきたのは、「え、待ってください。決めるのは日本に帰る前まで待ってからでもいいですよ。」という言葉でした。
その後、金継ぎのメタファーを導入した瞑想から始め、素敵な場づくりのお手伝いをさせていただいたワークショップを今井さんと開催しました。そしてやはり、お帰りになるときには「また来ることにしました!」と、今井さん。着々と次の準備をされ、今月のオランダでのワークショップは開催決定後まもなく満席になったそうです。
ついこの間、書道を取り入れた「今、ここ」に焦点をあてるワークショップを書道の師範、まなみさんと開催した際にも出席してくれたオランダ人のKさんに、昨年秋の時点での今井さんと私のやり取りのことを伝えると、「千津、そう言ってくれて本当によかった!僕は正文こそ真のマスターだと思っているし、彼の人柄に魅了されて、彼から金継ぎを学びたいんだ」と。
これを聞いて、静かに感動している自分がいました。どんなことにも、どんなに多くの人が同じようなことをしているように見えても、必ずその人なりの色と「場」がある。金継ぎや書道だけでなく、私の生業である傾聴パートナーとしてのコーチングや、場づくりのファシリテーションにも。同じようにコーチやファシリテーターが多くいる中でも、自分ならではの色と輝きが、必ずあるはずだ、と感じます。
イギリスのカンファレンスで、他の方主催のワークショップに参加した際、上の写真のカードを見つけて、「わ!」と心惹かれました。
「私は自分の光を受け入れ、それを分かち合う。私はその場に立つことを選び、そして輝く。」
あ、これはまさに私が目指していることだ、と直感的に感じました。
[ワークショップとカードは、Olayinka Lagunju さん によるものです。]

五周年に、新たな出発
実は去る4月29日、私の個人事業、シナジーファシリテーションが設立五周年を迎えました。この五年、大学講師としての仕事からとてつもなく大きな学びを得た一方で、時間的にもエネルギー的にも余裕がなく、自分の会社のことは「後回し」にしてきたというのが実情です。
昨年10月にタンザニアに行ったことが、自分の原点を思い出し、価値観と改めてつながる時間になりました。そのおかげで、大学講師の仕事を辞める決意を改めて確認しました。
奇しくもちょうど五年前、やはり長年のアイデンティティであった国際機関での仕事を卒業する決心をし、同じような解放感を覚えたことを、本当に昨日のことのように思い出します。とても感慨深いです。
ただ、この五年間を無駄にしたとはまったく思っていなくて、むしろ大変に必要な時間だったと感じています。すべてのことには意味がある――この五年があったからこそ、五周年を迎えた自分の会社とともに、新しいスタート地点に立っている。そう感じています。
私の事業は、現在、以下の三つを柱としており、プロコーチ、そしてプロファシリテーターとしての立場から実践しています。
対話と参加型プロセス
多様な人々が安心して対話し、ともに考え、参加できる場づくりを行っています。平和構築、人道支援、環境、コミュニティ分野などを中心に、異なる立場や背景を持つ人々の声を丁寧に扱いながら、対話や意思決定のプロセスを支えています。
また、対話と傾聴を土台に、対立や意見の違いを抱える人々が、ともに前に進むためのメディエーションにも取り組んでいます。最近、国際認証につながる研修を修了しましたが、私にとってそれはまったく新しい学びというより、これまで実践してきた対話、傾聴、ファシリテーション、コーチングの経験を統合し、改めて体系化するプロセスだったと思っています。
リーダーシップ開発
参加型ワークショップ、研修、メンタリング、チームコーチングなどを通して、個人と組織の成長を支援しています。対話力、ファシリテーション、異文化コミュニケーション、リフレクティブ・リーダーシップなどをテーマに扱っています。
ウェルビーイングとレジリエンス
忙しさやプレッシャーの中で働く方々が、立ち止まり、自分の価値観や方向性とつながり直すためのサポートを行っています。バーンアウト予防、キャリアの転機、変化の時期における伴走支援も含まれます。

コーチングのお祭り
5月11日から17日は、国際コーチング連盟による国際コーチング週間です。今年で4回目となる、毎年この期間に開催しているコーチ同士の対話の会を、今年も5月13日に開催しました。
人道支援や開発支援をはじめ、広く社会的インパクト分野に関わるコーチのみなさんと、学びを共有しながら対話する素敵な時間になりました。こうして、コーチ同士でそれぞれのコーチング実践からの学びを共有し合うことは、本当に力強く、励みになり、「これからも続けていこう」という力をもらえるものだなと改めて実感しました。
また、コーチングの意味とその力強さを、より多くの方に体験していただけるよう、キャンペーンも実施します。今回のタイトルは、
「アイデアを言葉にしてみる コーチとの対話」
コーチングって何?と思う方でも、静かに傾聴しながら、新しい視点をもたらす質問をしてくれる相手とともに、自分のアイデアや思いを言葉にしていく時間――そう考えると、少し申し込みやすくなるかなと思い、このタイトルにしました。
今回は特別料金をいただく形にしていますが、その代わりに、その後継続してお申し込みいただいた場合には、通常より大きな割引が適用されます。
申し込みリンクはこちらになります。ご関心のある方は、どうぞお気軽にご利用ください。